1.
貴方は死という事実をまだ真面目に考えた事がありませんね
夏目漱石「こころ」
2.
若いうちほど淋しいものはありません。
夏目漱石「こころ」
3.
香をかぎ得るのは、香を焚き出した瞬間に限るごとく、酒を味わうのは、酒を飲み始めた刹那 にあるごとく、恋の衝動にもこういう際どい一点が、時間の上に存在しているとしか思われないのです。
夏目漱石「こころ」
4.
目的物がないから動くのです。あれば落ち付けるだろうと思って動きたくなるのです
夏目漱石「こころ」
5.
私は未来の侮辱を受けないために、今の尊敬を斥(しりぞ)けたいと思うのです。私は今より一層淋しい未来の私を我慢する代りに、淋しい今の私を我慢したいのです。
夏目漱石「こころ」
6.
悪い人間という一種の人間が世の中にあると君は思っているんですか。そんな鋳型に入れたような悪人は世の中にあるはずがありませんよ。平生はみんな善人なんです。少なくともみんな 普通の人間なんです。それが、いざという間際に、急に悪人に変るんだから恐ろしいのです。
夏目漱石「こころ」
7.
こういう嫉妬は愛の半面じゃないでしょうか。私は結婚してから、この感情がだんだん薄らい で行くのを自覚しました。その代り愛情の方も決して元のように猛烈ではないのです。
夏目漱石「こころ」
8.
精神的に向上心のないものは、馬鹿だ
夏目漱石「こころ」
9.
然し……然し君、恋は罪悪ですよ
夏目漱石「こころ」
10.
記憶して下さい。私はこんな風にして生きて来たのです。
夏目漱石「こころ」
11.
恐れてはいけません。暗いものをじっと見つめて、その中から、あなたの参考になるものをおつかみなさい。
夏目漱石「こころ」
12.
恋の満足を味わっている人はもっと暖かい声を出すものです。
夏目漱石「こころ」
13.
私は冷(ひやや)かな頭で新らしい事を口にするよりも、熱した舌で平凡な説を述べる方が生きていると信じています。血の力で体(たい)が動くからです。
夏目漱石「こころ」
14.
自由と独立と己れとに充ちた現代に生まれた我々は、その犠牲としてみんなこの淋しみを味わなくてはならないでしょう。
夏目漱石「こころ」
15.
先生は奥さんの幸福を破壊する前に、先ず自分の生命を破壊してしまった。
夏目漱石「こころ」
16.
悪い人間という一種の人間が世の中にあると君は思っているのですか。そんな鋳型に入れたような悪人は世の中にあるはずがありませんよ
夏目漱石「こころ」
17.
私の未来の運命は、これで定められたのだという観念が私の凡てを新たにしました。
夏目漱石「こころ」
18.
君は人間らしいのだ。或は人間らし過ぎるかも知れないのだ。
夏目漱石「こころ」
19.
他に愛想を尽かした私は、自分にも愛想を尽かして動けなくなったのです。
夏目漱石「こころ」
20.
死に直面してよかったことといえば、それだね。毎日、生きてるって思って生きるようになった。
夏目漱石「こころ」
21.
然し人間は健康にしろ病気にしろ、どっちにしても脆いものですね。
夏目漱石「こころ」