1.
正しいことを言うときは少しひかえめにするほうがいい。正しいことを言うときは相手を傷つけやすいものだと気付いているほうがいい
吉野弘
2.
やさしい心の持主はいつでもどこでもわれにもあらず受難者となる。何故(なぜ)ってやさしい心の持主は他人のつらさを自分のつらさのように感じるから。
吉野弘
3.
ひとが ひとでなくなるのは 自分を愛することをやめるときだ
吉野弘
4.
パチンコに走る指たちを責めるな。麻雀を囲む膝たちを責めるな。水のない多忙な苦役の谷間に、われを忘れようとする苦しみたちをも責めるな
吉野弘
5.
２人が睦まじくいるためには 愚かでいるほうがいい 立派すぎないほうがいい 立派すぎることは 長持ちしないことだと 気づいているほうがいい
吉野弘
6.
非難することがあっても、非難できる資格が自分にあったかと疑わしくなるほうがいい
吉野弘
7.
二人のどちらかがふざけているほうがいい。ずっこけているほうがいい
吉野弘
8.
立派でありたいとか 正しくありたいとかいう 無理な緊張には 色目を使わず ゆったり ゆたかに 光を浴びているほうがいい
吉野弘
9.
健康で 風に吹かれながら 生きていることのなつかしさに ふと 胸が熱くなる そんな日があってもいい
吉野弘
10.
お父さんは お前に多くを期待しないだろう。ひとがほかからの期待に応えようとして、どんなに自分を駄目にしてしまうか。お父さんは はっきり知ってしまったから
吉野弘
11.
自分を愛することをやめるとき、ひとは他人を愛することをやめ、世界を見失ってしまう
吉野弘
12.
自分があるとき、他人あり、世界がある。
吉野弘
13.
かちとるにむづかしく、はぐくむにむづかしい、自分を愛する心
吉野弘
14.
他人の行為を軽々しく批判せぬ事です。自分の好悪の感情で人を批判せぬ事です。善悪のいずれか一方に、その人を押し込めない事です
吉野弘
15.
人間は その不完全を許容しつつ 愛しあう事です 不完全であるが故に 斥(しりぞ)けあうのでなく 人間同士が 助けあうのです
吉野弘
16.
生まれることも死ぬことも人間への何かの遠い復讐かもしれない
吉野弘
17.
完璧をめざさないほうがいい。完璧なんて不自然なことだとうそぶいているほうがいい
吉野弘
18.
民謡というのは、作詞者とか、作曲者がわからなくとも、歌が面白ければ歌ってくれる。だから、私の作者の名前がなくとも、作品を喜んでくれるという意味で、私は知らない間に民謡を一つ書いちゃったなと、そういう感覚なんです
吉野弘
19.
民謡というのは、著作権料がいりませんよ。 作者が不明ですからね。こうやって聞いてくださる方は、非常に良心的に聞いてくださるわけですね。だから、そういう著作権料というのは心配はまったく要りませんから……
吉野弘
20.
「いかが、お過ごしですか」とはがきの初めに書いて落ちつかない気分になる「あなたどんな過ちをしていますか」と問い合わせでもするようで
吉野弘
21.
生きることはそのまま過ちであるかもしれない日々
吉野弘
