1.
どのみち死なねばならぬなら、私は、納得して死にたいのだ。
梅崎春生
2.
人間はすべてのことを、大体自分の都合のいいように解釈するものである。都合の悪いほうに解釈するようになると、その人はノイローゼという病名を与えられる。
梅崎春生
3.
メモはメモだけに終わって、メモ自身からは何も生まれっこないんだぜ。
梅崎春生
4.
オセッカイこそ人間が生きていることの保証である
梅崎春生
5.
近頃の若い者云々という中年以上の発言は、 おおむね青春に対する嫉妬の裏返しの表現である。
梅崎春生
6.
悪口というのは、常に必ず自分のところに戻ってくる。
梅崎春生
7.
既成事実さえできれば、理屈や弁解はあとからどうにでもつくもんだ。
梅崎春生
8.
今はうしなったもの、二十年前には確かにあったもの、それを確めたかったんだ
梅崎春生
9.
弱みはあるのに、自分には弱みはひとつもないといった顔で生きているのが、一般の人間だ。つまり俗物というやつだね。そうしないと、俗物は生きてゆけない
梅崎春生
10.
死といっても、死について哲学的省察をしているわけではない、また自殺を考えているのでもない。ただぼんやりと死を考えているだけだ
梅崎春生
11.
どんなに苦しい記憶が、自分を責めていても、それを黙って我慢して、つつましく今の時代を生きていこうとしてる人も、沢山いると思うんです
梅崎春生
12.
今思うと、魚釣りというものはそれほど面白いものではないが、生活の代償とでも言ったものが少なくともこの突堤にはあった。それがきっと僕を強く引きつけたのだろう
梅崎春生
13.
辰野先生より来信。つまらぬ作品を注文者にわたすな。やせても朽れても、片々たる作品を書くな、ということ。ぐらぐらしていた気持ちがこれでピンとスジガネ入る
梅崎春生
14.
「なぜ退屈するんだ」「偽物ばかりが世の中にいるからだよ」
梅崎春生
15.
日本人の幸福の総量は極限されてんだ。一人が幸福になれば、その量だけ誰かが不幸になっているのだ
梅崎春生
16.
その極致の姿を現すにおいて、競い合いのバカバカしさがあらわに出ていたからだろう。極致という奴はどんな場合でも、奇怪でグロテスクなものである。人間という生身の場合においては特にそうだ
梅崎春生
17.
小説を料理で定食とすれば、随筆はアラカルトみたいなものである。しかしコックの上手下手は、オムレツを注文すれば判るという位で、だから随筆集と言っても気軽には出せない
梅崎春生
18.
題材は経験したこと、ひとに聞いた話、空想でつくりあげること、いろいろある。その混合型ももちろんある。書き始めて途中でうまく行かない場合、無理には書き続けない。放棄してしまう
梅崎春生
19.
自分一人が笑い者になってその場が和やかにおさまるものなら、彼は敢然と道化の役を買ってでるのだ。そうすることによって自分の実力の無さや惨めさを人が忘れてくれればそれでいいのである
梅崎春生
20.
子供というのは遊ぶことが仕事であり、勉強ということは付け足しである。それが勉強ばかりになったら、人間性(子供性というべきか)は荒廃してしまう
梅崎春生
21.
定時労働だけでも黄色い汁、いや、黄色い汗がでるというのに、何を好んで残業までする気持ちになるんだろうな。ライスカレーを三杯食べて、さらに二杯詰め込むようなものじゃないか
梅崎春生