1.
スケールの大きさはいつもストーリーのよさにかなわない。
伊丹万作
2.
世界の名作といわれるものに現われる人物たちを思い浮べてみると、どうも小説の最高の境地は決して個々の性格を描き分けて見せたりするところにはなく、むしろ人間の典型を描くところにあるように思われる。
伊丹万作
3.
程度の差こそあれ、人よりすぐれたいということは人間一般の欲望である。人よりすぐれたいを煮つめて行くと一流に至つて究極に達する。つまり人間は本能的に一流へのゴールド・ラッシュをやつているようなものである。
伊丹万作
4.
戦争が始まつてからのちの私は、ただ自国の勝つこと以外は何も望まなかつた。そのためには何事でもしたいと思つた。
伊丹万作
5.
「だまされていた」といつて平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。
伊丹万作
6.
真理は必ずしも常識と一致しない。
伊丹万作
7.
元来私は一個の芸術家としてはいかなる団体にも所属しないことを理想としているものである。
伊丹万作
8.
ある時間内の訓練が失敗に終つたとしてもあきらめてしまうのはまだ早い。その次に我々が試みなければならぬことは、さらに多くの時間と、そしてさらに熱烈な精神的努力をはらうことである。
伊丹万作
9.
リアリズムとは、本当らしき嘘である。シンボリズムとは、嘘らしき本当である。
伊丹万作
10.
近ごろ人の心に余裕を見出すことができなくなつたのが私には何より悲しい。それはどんな物質的欠乏よりも惨めだ。心の余裕は物質の窮迫を克服する力を持つている。逆境のどん底に楽天地を発見する力を持つている。
伊丹万作
11.
百の演技指導も、一つの打つてつけな配役にはかなわない。
伊丹万作
12.
要するに我々は原則として自分にできない動きを人に強要しないことである。自分には簡単にできると思つていたことが、動いてみると案外やれないことは珍しくない。
伊丹万作
13.
その仕事の実績において十分尊敬に価する天才が現われてきた場合には、その人が一国の首相の十倍二十倍の報酬を得ても別に不思議はない。しかし現在、我々の国民常識の判断に訴えて首相以上の俸給を取るのが当然だと思えるような映画俳優が一人でもいるだろうか。
伊丹万作
14.
映画は、映画以外のいかなる芸術にも似ていない。それはただ我々の住む世界に似ているだけである。
伊丹万作
15.
映画をよくするためにはシナリオをよくすることが最も早道であり、シナリオをよくするためには作家の質を引き上げることが必要であり、作家の質を引き上げるためには、何よりも作家の独創性を問題にしなければならぬ。
伊丹万作
16.
才能の乏しい、平凡な俳優が単に偶然の成行きから首相の何倍もの報酬を得ている点に問題があるのである。
伊丹万作
17.
人間は結局一人々々のものだ。ある人間の力が、確実に他の人間に向かつて働き得るのは、物資の援助を与える場合くらいのものだ。
伊丹万作
18.
つまりだますものだけでは戦争は起らない。だますものとだまされるものとがそろわなければ戦争は起らない
伊丹万作
19.
一度だまされたら、二度とだまされまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない。
伊丹万作
20.
いつたいこの世の中に芸術というものがあるかぎりは芸術家の主権はあくまでも尊重されなければならないものである。そのためには芸術家がだれかの意志によつて何かをやらされている――こういう状態は絶対にいけない。
伊丹万作
21.
騙されるのもまた悪である
伊丹万作