1.
矛盾だらけの人間がつくりあげている世の中というものも、また当然、矛盾をきわめているのだ。
池波正太郎
2.
人間は死ぬという事実こそが、自分を磨くための磨き砂だ。
池波正太郎
3.
近頃の日本は「白」でなければ「黒」である。その中間の色合いが全く無くなってしまった。その色合いこそが「融通」と言うものである。
池波正太郎
4.
人間の欲望は際限もないもので、あれもこれもと欲張ったところで、どうにもならぬことは知れている。一を得るためには、一を捨てねばならぬ。
池波正太郎
5.
人のこころの奥底には、おのれでさえわからぬ魔物が棲んでいるものだ。
池波正太郎
6.
人間は、生まれ出た瞬間から、死へ向かって歩みはじめる。死ぬために、生きはじめる。
池波正太郎
7.
おのれの強さは他人に見せるものではない。おのれに見せるものよ。
池波正太郎
8.
日本は民主主義になって「自由」とやらを得たが、その「自由」という言葉の空しさを知ったばかりでなく、人びとの心は「詩情」を失って乾ききってしまった。人間という生きものがもつ矛盾は、尽きる事を知らない。
池波正太郎
9.
男らしさとか女らしさという前にね、男も女も共通していちばん大事なことがあるんだよ。「人の身になって考える」ということ。
池波正太郎
10.
便利という価値観に負けては、人間社会本然の大事な部分を見失ってしまう。
池波正太郎
11.
自分一人だけ、わがまま勝手な事を言って威張りちらすというのは、亭主関白でもなんでもない。
池波正太郎
12.
たまにはうんといい肉で贅沢なことをやってみないと、本当のすきやきの美味しさとか、肉の旨みというのが味わえない。
池波正太郎
13.
六十を過ぎると、あらゆる拘束が、あまり気にならなくなる。何とか切り抜ける智恵も若い時と違って頭に浮かんでくる。拘束を、楽しむ気分が生じてくる。
池波正太郎
14.
未熟ということは大切なんだよ。僕だって未熟。天狗になったらおしまいだよ。
池波正太郎
15.
気分転換がうまくできない人は仕事も小さくなってくるし、体も壊すことになりがちだね。
池波正太郎
16.
全てわかったようなつもりでいても、双方の思い違いは間々あることで、大形にいうならば、人の世の大半は、人びとの勘ちがいによって成り立っているといってもよいほどなのだ。
池波正太郎
17.
人間というやつ、遊びながら働く生きものさ。善事をおこないつつ、知らぬうちに悪事をやってのける。悪事をはたらきつつ、知らず識らず善事をたのしむ。これが人間だわさ。
池波正太郎
18.
剣道で「残心」という言葉がある。闘って、相手を打ち据えたとき、気をゆるめずに尚も構えをたて直し相手の出方を見る。これが残心だ。
池波正太郎
19.
人というものは、はじめから悪の道を知っているわけではない。何かの拍子で、小さな悪事を起こしてしまい、それを世間の目に触れさせぬため、また、次の悪事をする。そして、これを隠そうとして、さらに大きな悪の道へ踏み込んでいくものなのだ。
池波正太郎
20.
人というものはな、おのれの長所を隠すことを工夫しなければいかぬよ。それでないと、おまえは自分の長所のために身を滅ぼすことになろう。
池波正太郎
21.
たとえ、一椀の熱い味噌汁を口にしたとき「うまい!」と感じるだけで、生き甲斐を覚えることもある。
池波正太郎