1.
言葉を不用意に信じない
長田弘
2.
記憶という土の中に種子を播いて、季節のなかで手をかけてそだてることができなければ、ことばはなかなか実らない
長田弘
3.
広い空の下に一人でいればわかる。人間はじぶんでかんがえているほど確かな存在などではないのだ。
長田弘
4.
無名なものを讃えることができるのが歌だ。
長田弘
5.
私が語るのではない。私をとおしてこの世界が語るのだ。
長田弘
6.
樹は、話すことができた。話せるのは沈黙のことばだ。そのことばは、太い幹と、春秋でできていて、無数の小枝と、星霜でできていた。
長田弘
7.
街歩きを楽しむには、目をきれいにし、耳をきれいにし、心もきれいにしなければ、何にもならない。
長田弘
8.
本当に伝えたいことがあるなら、言ったほうがいい。言いたい言葉をもっているなら。
長田弘
9.
空の下で、樹のことばを、聴くように見、見るように聴く。
長田弘
10.
悲しみを信じたことがない。どんなときにも感情は嘘をつく。
長田弘
11.
この世でいちばん難しいのは、いちばん簡単なこと。
長田弘
12.
幼少期の記憶は、「初めて」という無垢の経験が刻まれている、いわば記憶の森だ。
長田弘
13.
今日の時間というのは季節を持たない時間、時計が刻む時間です。近代が作ってきた社会というのは、時計が刻む時間を元にしてきました。
長田弘
14.
死の知らせを聞くと、どうしてか近しく、懐かしく思われる。そうなのだ。もっとも遠い距離こそが、人と人とをもっとも近づけるのだ。
長田弘
15.
いつかはきっと、いつかはきっとと思いつづける。それがきみの冒した間違いだった
長田弘
16.
ひとは結局、できることしかできない。あなたはじぶんにできることをした。あなたは祈った。
長田弘
17.
一期一会は食卓にあり。人生とは、誰と食卓を共にするかということだ。
長田弘
18.
なくてはならないものなんてない。いつもずっと、そう思ってきた。所有できるものはいつか失われる。なくてはならないものは、けっして所有することのできないものだけなのだと。
長田弘
19.
思いだすことも、旅することだ。
長田弘
20.
人の感受性をつくるのは、人のそだった日々の風景だ。
長田弘
21.
考えることが快楽でない人は精神の字にかならず(こころ)とルビを振る。
長田弘