1.
出来上った知を貰う事が、学ぶ事ではなし、出来上った知を与える事が教える事でもなかろう。質問する意志が、疑う意志が第一なのだ。
小林秀雄
2.
考えるという事と書くという事は二つの事実を指してはいないのである。言葉という技術を飛びこして何か考えるなどとは狂気の沙汰である。
小林秀雄
3.
問いがそのまま答えになるほど執拗に問う人もあり、問う能力がないから答えを持っている人もあるのだ。
小林秀雄
4.
自信というものは、いわば雪の様に音もなく、幾時の間にか積った様なものでなければ駄目だ。そういう自信は、昔から言う様におへその辺りに出来る。頭には出来ない。頭はいつも疑っている方がよい。難しい事だが、そういうのが一番健康で望ましい状態なのである
小林秀雄
5.
人間は何もしないで遊んでいる時に育つんだよ
小林秀雄
6.
教えようと思っている人から教わった人は一人もいない
小林秀雄
7.
見ることは喋ることではない。言葉は眼の邪魔になるものです
小林秀雄
8.
僕らが生きてゆくための知恵というものは、どれだけ進歩してますか。例えば論語以上の知恵が現代人にありますか
小林秀雄
9.
科学というのは、人間が思いついた一つの能力に過ぎないということを忘れてはいけない
小林秀雄
10.
世間を渡るとは、一種の自己隠蔽術に他ならない
小林秀雄
11.
絶望するにも才能がいる
小林秀雄
12.
歴史は進歩なんかしない。ただ、変化するだけだ
小林秀雄
13.
老醜という言葉は様々な生物にいえるが、大木には当てはまらぬ。大木は老いていよいよ美しい
小林秀雄
14.
現在の行動にばかりかまけていては、生きるという意味が逃げてしまう
小林秀雄
15.
実生活を離れて思想はない。しかし、実生活に犠牲を要求しないような思想は、動物の頭に宿っているだけである。
小林秀雄
16.
しっかりと自分のものになり切った強い精神の動きが、本当の意味で思想と呼ぶべきものだと考える。
小林秀雄
17.
歴史意識とは──しまった、とんでもないことをしてしまった、どうしようという悶(もだ)えだ。
小林秀雄
18.
陰口をきくのはたのしいものだ。人の噂が出ると、話ははずむものである。みんな知らず知らずに鬼になる。よほど、批評はしたいものらしい
小林秀雄
19.
今日可愛がられている批評家の言葉が、人手から人手に渡り歩き、どんなに一銭銅貨の様によごれている事か
小林秀雄
20.
美が欲しいのではない、生理的快感が欲しいのだ。何物も教わりたくはない、ただすべてを忘却したいのだ。時間を、神経を消費したいのだ。見たくはないのだ。酔いたいのだ
小林秀雄
21.
社会は人々の習慣によって生きる。社会革命とは新しい習慣をあらたに製造する事だ。
小林秀雄