1
人を欺いて言葉巧みに生きる事は、不器用でも誠実に生きる事には敵わない。
巧詐(こうさ)は、拙誠(せつせい)に如かず
韓非子
2.
理にかなった事をすれば苦労せずとも目標は達成できる。しかし、理にかなわぬ事をやっていれば、いくら苦労しようとも事は成就しない。
事の理によるときは、労せずして成る
韓非子
3.
志を成し遂げることが困難なのは、誰かに勝てないからではない。自分自身に勝てないところに、すべての原因がある。
志の難きは、人に勝つに在らずして自らに勝つに在り
韓非子
4.
お互いの利益になるのであれば遠い国の人ともうまくやっていける。一方で損になるのであれば、父と子の間であっても怨みが生じる。
之を利するを以て心と為さば、則ち越人も和し易く、之を害するを以て心と為さば、則ち父子も離れかつ怨まむ。
韓非子
5.
氷と炭を同じ器に入れれば氷は溶けて炭火は消える。両者の言い分を取り入れるのは失敗のもとである。
ひょう炭は器を同じくして久しからず。
韓非子
6.
権力の二つの柄は刑罰と恩賞である。人は刑罰をおそれ、恩賞を喜ぶ。
二柄(にへい)は刑と徳なり。
韓非子
7.
法の適用は、身分の高い人だからといっておもねって曲げてはならない。大工は木が曲がっていても墨縄を曲げたりはしない。
法は貴におもねらず、縄は曲にたわまず。
韓非子
8.
物にはそれに見合った正しい使い道があるように、人材にもそれを配する適切な場所や処遇がある。
其れ物は宜しき所あり、材は施す所あり。
韓非子
9.
小さな利益にひかれることは、大きな利益の妨げになる。
小利を顧みるは、則ち大利の残なり。
韓非子
10.
法令は文面に明らかにし、術を運用するにあたっては顔色や行動のうえにあらわしてはならない。
法は顕かなるに如くはなく、術はあらわるるを欲せず。
韓非子
11.
利益だけを貪欲に追い求めていると、いずれ国を失い、その身も滅ぼすことになる。
たんぷくにして利を好むは、則ち国を滅ぼし身を殺すの本なり。
韓非子
12.
虎が犬を服従させることができるのは爪と牙があるからだ。人君も刑罰という武器をもたなければ人を治めることはできない。
虎の能く狗を服する所以の者は、爪牙なり。
韓非子
13.
基準が正しくても、必ず受け入れられるとは限らない。筋道が正しくても、必ず用いられるとは限らない。相手に聴かれ用いられるには、正しいこととは別の要素も必要になる。
故に度量は正しと雖も、未だ必ずしも聴かれず、義理は全しと雖も、未だ必ずしも用いられず。
韓非子
14.
賢者は賢者として愚者は愚者として、応じた地位に落ち着いている。これこそが最良に治まったありさまである。適材適所だと捉えている。文中の「貴賤」で考えると、少しイメージが変わってしまう。
貴賤は相いこえず、愚者は提衡して立つ。治の至りなり。
韓非子
15.
君主が臣下にとって実行困難なことを命令し、能力不足を罪とすれば、臣下は私怨を持つ。部下の能力を見て、出来ると判断するならよい。しかし能力に関係なく「して欲しい」で命令すれば、この通りになるだろう。
人主、為し難きを立てて、及ばざるを罪とすれば、則ち私怨生ず。
韓非子
16.
知っていても知らないふりで質問すると、知らないことまでよく分かる。一つのことを深く知ると、隠されていた多くのことを知ることが出来る。
智を挟みて問えば、則ち智らざる者も至り、深く一物を智らば、衆隠皆な変ず。
韓非子
17.
人のためと思えば、人を責めたり怨んだりする。自分のためだと思えば、事は順調に行われる。
夫の相い為めにするを挟まば、則ち責望し、自ら為めにすれば、則ち事行われる。
韓非子
18.
賢者や知恵者を求めたり、民が願う政治を目指すのは、国が乱れる発端となる。これではとても一緒に政治を行なうことは出来ない。
故に士を挙げて賢智を求め、政を為して民に適せんと期するは、皆な乱の端にして、未だ与に治を為すべからざるなり。
韓非子
19.
知らずに意見するのは馬鹿者だし、知りながら言わないのは不誠実
知らずして言うは不智、知りながら言わざるは不忠
韓非子
20.
父母は、たとえ戯れであっても、子を欺いてはいけない。
韓非子
21.
人主の患は、人を信ずるにあり。人を信ずれば則ち人に制せらる
韓非子