1.
みんなちがって、みんないい。
金子みすゞ
2.
かあさん知らぬ草の子を、なん千万の草の子を、土はひとりで育てます。草があおあおしげったら、土はかくれてしまうのに。
金子みすゞ
3.
青いお空のそこふかく、海の小石のそのように、夜がくるまでしずんでる、昼のお星はめにみえぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。
金子みすゞ
4.
海の魚はかわいそう。お米は人につくられる、牛はまき場でかわれている、こいもお池でふをもらう。
けれども海のお魚はなんにも世話にならないし、いたずら一つしないのにこうしてわたしに食べられる。ほんとに魚はかわいそう。
金子みすゞ
5.
朝やけ小やけだ大漁だ大ばいわしの大漁だ。浜はまつりのようだけど海のなかでは何万のいわしのとむらいするだろう。
金子みすゞ
6.
「遊ぼう」っていうと 「遊ぼう」っていう。「ばか」っていうと 「ばか」っていう。「もう遊ばない」っていうと 「遊ばない」っていう。そうして、あとで さみしくなって、「ごめんね」っていうと 「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、 いいえ、誰でも。
金子みすゞ
7.
わたしはすきになりたいな、何でもかんでもみいんな。ねぎも、トマトも、おさかなも、のこらずすきになりたいな。
金子みすゞ
8.
世界のものはみィんな、神さまがおつくりになったもの
金子みすゞ
9.
ひとりで足ぶみしていたら、ひとりでわらえてきましたよ。ひとりでわらってしていたら、だれかがわらってきましたよ。
金子みすゞ
10.
土がくろくて、ぬれていて、はだしの足がきれいだな。
金子みすゞ
11.
すずめがなくな、いいひよりだな、うっとり、うっとりねむいな。上のまぶたはあこうか、下のまぶたはまァだよ、うっとり、うっとりねむいな。
金子みすゞ
12.
かいこはまゆにはいります、きゅうくつそうなあのまゆに。けれどかいこはうれしかろ、ちょうちょになってとべるのよ。
人はおはかへはいります、暗いさみしいあのはかへ。そしていい子ははねがはえ、天使になってとべるのよ。
金子みすゞ
13.
人の知っている草の名は、わたしはちっとも知らないの。人の知らない草の名を、わたしはいくつも知ってるの。それはわたしがつけたのよ、すきな草にはすきな名を。
人の知っている草の名も、どうせだれかがつけたのよ。
金子みすゞ
14.
私は不思議でたまらない、黒い雲からふる雨が、銀に光っていることが。私は不思議でたまらない、青い桑の葉食べている、蚕(カイコ)が白くなることが。私は不思議でたまらない、たれもいじらぬ夕顔が、ひとりでぱらりと開くのが。
私は不思議でたまらない、誰にきいても笑ってて、あたりまえだ、ということが。
金子みすゞ
15.
だれにもいわずにおきましょう。朝のお庭のすみっこで、花がほろりとないたこと。もしもうわさがひろがってはちのお耳へ入ったら、わるいことでもしたように、みつをかえしにゆくでしょう。
金子みすゞ
16.
ほんとはきげんのいいほうが、きっとかあさんはすきだから
金子みすゞ
17.
なめても、すっても、まだいたむべにさし指のさかむけよ。おもいだす、おもいだす、いつだかねえやにきいたこと。
「指にさかむけできる子は、親のいうこときかぬ子よ。」
おとつい、すねてないたっけ、きのうも、お使いしなかった。かあさんにあやまりゃ、なおろうか。
金子みすゞ
18.
それはきれいなばらいろで、けしつぶよりかちいさくて、こぼれて土に落ちたとき、ぱっと花火がはじけるように、おおきな花がひらくのよ。
もしもなみだがこぼれるように、こんなわらいがこぼれたら、どんなに、どんなに、きれいでしょう。
金子みすゞ
19.
はちはお花のなかに、お花はお庭のなかに、お庭は土べいのなかに、土べいは町のなかに、町は日本のなかに、日本は世界のなかに、世界は神さまのなかに。そうして、そうして、神さまは、小ちゃなはちのなかに。
金子みすゞ
20.
泥のなかから蓮が咲く。それをするのは蓮じゃない。卵のなかから鶏がでる。それをするのは 鶏じゃない。それに私は気がついた。それも私のせいじゃない。
金子みすゞ
21.
子供が子雀つかまへた。その子のかあさん笑つてた。雀のかあさんそれみてた。お屋根で鳴かずにそれ見てた。
金子みすゞ